俺SFメカコンテスト


動く戦車オフ会毎年恒例の俺SFメカコンテスト、2015年のテーマは…
宇宙パトロール飛行戦車「俺スペース2号」だ!

リモコン「スペース2号」の全貌。
★宇宙パトロール飛行戦車「俺スペース2号」コンテスト 参加要領

 ・LSの宇宙パトロール飛行戦車「スペース2号」をオマージュして、参加者自身が製作したSFメカである事。
 ・自走可能である事。
 ・「スペース2号」の最大の特徴である、空飛ぶスーパーSF戦車を創作して下さい。
 ・垂直噴射ジェットやヘリの様な回転翼(ローター)ではなく、有翼飛行デザインの宇宙戦車である事。
 ・市販キットからの部品流用は自由。
 ・屋内でのデモンストレーションが可能であれば、サイズや動力等に関する制約なし。
 ・オリジナル版の「スペース2号」による景気付け参加も受け付けています。
  
(俺SFメカコンテストのシール貼付投票はスクラッチ作品のみです。オリジナルキットの参加作品は一般の
   ビジュアル、テクニック、ヒストリカル用の投票用紙で評価して下さい)

 さて、それではここでテーマの元となった宇宙戦車に関して、作品制作の参考のために若干説明を致しましょう。

 
但し毎度の事ながら、作品制作に不必要なほど語ってしまうので、興味の無い方は読み飛ばして下さい。(笑)
 
もう一つの壮大なSF世界 LS宇宙シリーズ!

 SFプラモデル、中でも時にJOSFと略される、マンガやテレビ番組や映画などの原作によらないメーカーオリジナルSFプラモデルは、我が国において昭和40年代前半を中心に独自の進化を遂げ、その数は数百とも言われています。
 しかし、その多くはメーカーが時流に乗って散発的にキット化したものが多く、主力ラインナップをシリーズ化し、デザイン的世界観まで作り上げた例は意外に多くありません。
 例えばサンダーバードなどのキャラクターSFプラモで一世を風靡した今井科学は、驚異的な登坂能力を誇る「連結戦車クローラー」や、障害物に当るとギミックモードに切り替わり、バックターンしつつ、ランチャーをリフトさせて搭載機を発進させた後、再度ランチャーをトラベリング位置に戻して前進モードに切り替わる超絶ギミックを、たった1個のモーターで実現した「ノンストップSFミサイル戦車ジグラート」等を発売しましたが、いずれも単体のギミックの面白さを追求した感が強く、商品群全体で「メーカーのSF世界観」まで構築するといったバックグラウンドビジョンまで醸成するには至りませんでした。
 一方ミドリやアオシマ、マルイなどは、自社のSFメカによる骨太のシリーズ展開によって、夫々のSF世界を生み出していたのはご存知の通りです。
 この違いは統一シリーズとしてのラインナップの多さか、と言えば必ずしもそうではなく、長岡秀星デザインで今でも色褪せないニットーのSFシリーズは歩行メカ2種類と地底戦車、ラセンタンクの4種類しかなく、世界のスケールモデルメーカーであるタミヤも、SFボート4種類、SF戦車2種類と、決して多くは無いオリジナルラインナップで独自のSF時空を演出しています。あるいはイッコーモケイはかなり多くのSFキットを出していますが、その中でもSF水陸両用艇2種類とSF潜水艇2種類というたった4つのキットで「人類の知らない、宇宙人と海底人の戦い」というシチュエーションで独自のSF世界観を作っています。
 各メーカーのキットで固有のSF世界観を感じるか否かというものは、多分にユーザーの感性に依る事は否めませんが、受け手がそう感じるからには、やはりメーカー自身が単品でキットを売りたいのか、何らかのキャラクタリスティックなシリーズビジョンがあったのかという商品戦略に負う所が大きいのではと思われます。
 そういった切り口で見る時、SF車両と言うジャンルでは、今まであまり語られなかった一つのメーカーがクローズアップされてきます。それが今回動く模型愛好会の俺SFメカコンテストの御題に上がった、LSのSF戦車です。

 
 今ほど「今まであまり語られなかった」と書きましたが、LSは特に水物モケイでSF高速艇「シーキャット」やSFミニボート「ポニー」など多くのSFキットをリリースしていた事で有名です。
 しかし飛行機のLS、オリジナルボートのLSというネームバリューの陰で、多分商品としては決して大ヒットとはいえなかったであろう隠れたラインナップがありました。それがスペース2号に代表されるSFシリーズ…、LSのSF戦車達で、その強烈なキャラクターの割に市場に出回った時期も数も限られたものだったからです。
 それでは「スペース2号」を軸に、そのLSのSF戦車世界の扉を開けてみましょう。
 

1967年発売の「スペース2号」。古いLSのマークが時代を感じさせます。

 それまで散発的な発売だったJOSFプラモデルですが、1966年にミドリが宇宙戦車「ビートル2世」、原子力自動車「エコーセブン」、地中戦車「キングモグラス」を発売して一気に燃え上がり、翌年にはミドリ1社だけで17種類ものSFプラモデルを発売するSFプラモデル奇跡の年のピークを迎えます。
 ここに来てスケールモデルのLS(エルエス研究所)も時代に遅れるなとばかり、1967年まずゼンマイSFカー「フォーミュラーパトロールカージェミニ9」と「宇宙パトロールカーファイヤーバード」を皮切りに、11月にゼンマイ版「スペース1号」、「スペース2号」を、次いで12月にリモコン版「スペース1号」、「スペース2号」を発売します。
 「大きい事はいい事だ!」と森永エールチョコレートが宣伝する高度成長時代、安保闘争は羽田事件で最大の流血を迎え、ベトナム戦争も激化する今から50年近く前の時代を感じさせる、旧エルエスマークの古式ゆかしいSF戦車。これがLSの記念すべきSF戦車第一号でした。
 SFシリーズNO.3となっているのは、その前に発売された「ジェミニ9」と「ファイヤーバード」に続く、という意味かと思いましたが、NO.4のゼンマイ「スペース2号」の後にはゼンマイSFカー「サンダーフラッシュ」が発売されながら、続くリモコン「スペー1号、リモコン「スペース2号」はそれぞれ連番でNO.5、NO.6となっており、SFシリーズとしてのナンバリングには謎が残ります。
 ゼンマイ版はゼンマイをワインドアップする四角シャフト直結で、アンテナが回転するギミックもありました。
  

宇宙パトロール飛行戦車リモコン「スペース2号」のパッケージ。

 そして今回の御題になった「スペース2号」。
 遠方の急峻な山岳地帯とクレーターの点在する平地は否応もなく地球を遙かに離れた世界を思わせ、ホリゾントの描く緩やかなカーブは更にそこが決して大きくはない小衛星規模の星である事を連想させます。
 そんな中でも青い空は濃密な大気がある事の示唆か?それが故の有翼飛行戦車なのか?そんな想像が次々に湧いてくる「スペース2号」のパッケージ。
 LSのファンでも古いエルエスマークのキットはかなり希少価値が高い珍しいものですが、そのロゴをつけたSFキットが存在する事は意外にも思えます。それだけに古いロゴとスマートで斬新なイラストの対比が興味深いキットです。
 「スペース1号」「スペース2号」とも、ゼンマイ版は200円、リモコン版は350円で、ゼンマイの次にシングル版がなく、いきなりモーター2個使用のリモコン番となる商品設定が変っていますね。実は、リモコン版にはシングル用の電池金具と逆転スイッチが付き、リモコン版はユーザーの選択でシングル版としても作れるコンバーチブルキットでした。
 「スペース2号」は車体下部は「スペース1号と同じもので、車体上部だけ組み変えてあるシリーズ構成でした。

 

宇宙ロケット戦車「スキッパー」のパッケージ。(提供:Tachikawaさん)

 翌1968年発売の宇宙ロケット戦車「スキッパー」。翌年とはいえ発売は1月ですから、ゼンマイ版の「スペース1、2号」、リモコン版の「スペース1、2号」に次いで、3ヶ月連続の新製品リリースとなります。
 この「スキッパー」からゼンマイ版、リモコン版という差別化はなくなり、キットはシングルに一本化されてリリースされました。小型の車体に似合わない巨大な有翼ロケットを搭載した異様な車体は、パッケージからはみ出さんばかりの迫力で見るものに迫ります。
 ミサイルランチャーとミサイル本体を除く車体下部と車体上部は「スペース1号」と同様のパーツで、各種の現実世界の戦闘車両同様、本体を流用した派生車両という位置付けでしょうか。宇宙ロケット戦車とは銘打っていますが、1号、2号が惑星用戦闘車両をイメージしていたのに比べ、こちらのパッケージは地球に似た環境での通常兵器のような戦闘シーンです。 

 

「ビッグコマンダー」のパッケージ。

 続くSF戦車は宇宙突撃戦車「ビッグコマンダー」。こちらは「スキッパー」とは若干離れて、同年5月の発売。パッケージでは商品名を「…コマンダ」と最後の長音を省略していますが、デカールの英語表記や他の資料に見られる商品名を勘案して、ここではより自然な「ビッグコマンダー」と呼ぶ事にします。
 凄まじい勢いで雪を跳ね飛ばす車体先端部は、一見ドリルのようにも見えますが、これは回転衝角(ラム)で、地中戦車ではなく突撃戦車という設定です。
 回転衝角にはラセンが刻まれているわけではなく「スペース1号」のレーダー基部の部品がそのまま使用されているのですが、パッケージでは巻き込まれる雪の軌跡が一見ドリルのラセンのようにも見える、中々芸の細かいイラストになっていますね。
 「スキッパー」が「スペース1号」の車体の派生車両だったのと同様、この「ビッグコマンダー」は見て分かる通り「スペース2号」の基本車体を使って飛行翼を廃し、回転ラムを装備したデザインとなっています。
 白銀の戦場で遺憾なく戦闘能力を発揮するウルトラメカの、赤が映える素晴らしいボックスアートです。
 これも「スキッパー」同様、シングル版のみがリリースされたようです。

 

リモコン「スペース2号」のインストと2モーターリモコン選択時の車内レイアウト。

 さて今度はそれぞれのキットの要素について紹介致しましょう。
 まずは皆さんが最も気になるリモコン版の仕掛けです。
 各キットの足回りは全て共通のもので、横幅が42.5ミリ、縦の長さは、車体上部を留める両端の出っ張りを入れない本体部分で118ミリという比較的小さなものです。概ね1/48クラスのサイズと言えば分り易いでしょうか。
 そんな小型の車体ですが、並列で二つのモーターを入れるには、130タイプモーター(当時はF13か、FA13モーターですね)なら十分可能です。因みにタミヤのワールドタンクシリーズの車体幅は更に狭い38.5ミリで、ベビーリモコンシリーズではその内部にギッチギチの並列で13モーターを横倒しに配して2モーターのリモコンに仕立てています。実はそれでも当時の13モーターはリード線押さえの突起が相互にぶつかるので、左右のモーターを1ミリ程ずらしてセッティングすると言う裏技を使っています。
 一方LSのSF戦車の42.5ミリという横幅は”外のり”で、内部の壁面間隔である”内のり”のサイズは丁度40ミリ。これは13タイプモーターの横幅である20ミリの2倍なので、13モーターを90度ねじって横置きにになくても、普通に13モーターの並列内蔵ができるサイズになっています。
 しかしLSはそうではなく、よりトルクの強い、当時出たばかりのRE14モーターを使用する選択をしました。
 これは当時の非力なモーターで完成後に動かなくなるリスクを負わず、確実な動きを求めた為と言えますが、その結果モーター2個の並列レイアウトは取れなくなり、その代わり車体の前後に二つのギアボックスを回転対称位置に配し、前のギアボックスで車体右前の車輪を駆動し、後ろのギアボックスで車体左後ろの車輪を回すというトリッキーな設計になりました。これは当時のタミヤの1/35戦車M41ウォーカーブルドッグにも見られる狗肉の配置です。
 本来実物の戦車でも、駆動輪(スプロケットホイール)を前輪駆動にするか後輪駆動にするかはちょっとした課題で、ドライバーのいる車体前方にクラッチを置く「操縦装置の要請」や、たるんで遊びが大きくなりやすい上部の「戻り」キャタピラに引っ張りテンションをかける”前駆動”を選択するか?あるいは後ろエンジンから車体前までパワーを伝えるドライブシャフトを車内に通して車高を高くするより、効率よくパワートレインを設計できる”後ろ駆動”にするか?と、各国設計人の設計思想が交錯するところでしたが、このリモコン戦車の逆向きタンデム配置のように、走行効率がぶっ違いになる実車はありません。これは限られた車内容積に、相対的に巨大な駆動機構を収めなければならない模型ならではの限られたアイディアと言えるでしょう。例えばこのように模型でしかありえないアイディアに、潜水艦の自動浮沈機構がありますが、こうまでしても小さな車体を2モーターリモコン操行にしたい動機付けは、日本ならではの発案と思われます。

リモコン「スペース2号」のシングル操行選択時の車内レイアウト。

 今度は同じ車体パーツでシングル仕様にした場合のレイアウトです。
 リモコンの場合、ギアボックスから出る一本の車軸の左右では、片側の車輪はシャフトに固定してスプロケットホイールとして機能し、反対側は回転軸として保持するだけで車輪自体は車軸に対しては自由回転するアイドラーホイールとして機能しますが、シングルモデルでは当然一本の車軸の両側は車輪を固定して両側をスプロケットホイールとして使います。
 こうして見ると単三電池2本というのはこの小さな車体には以外に大きく映り、オリジナルのギアボックスを使ったツインモーターのレイアウトでは、例えばあの空きスペースに電源と受信機をセットしてラジコンにすると言うのは、今の技術を持ってしてもかなり限界に近いクリアランスと言えます。タミヤの走るミニタンクより二回り小さい、42.5ミリ×118ミリという車体サイズが如何に小さなものかを実感して頂けるでしょうか。
 余談ですが、ちょっと変ったパワートレイン設計では、トミーの小さな1chラジコンタンク「ブッタンク」があります。これは右後方車輪だけが動力輪で、そこで駆動されたキャタピラで回転する右前方の車輪が、車軸を介して同軸で回転する左前方の車輪を駆動輪に仕立て、左側のキャタピラを前輪駆動で回すといった、いわば「行って来い」スタイルの設計になっています。
 これは一見煩雑な設計のようですが、前車輪を繋ぐシャフトの片方にラチェット機構を組み込んで前進時しか回転を伝えないようにコントロールし、バック時には左車輪は空転して車体全体では後進時にバックターンをすると言ったトリッキーな、しかしかなり考えられた設計になっています。
 これは今から20年ほど前の電子設計技術の限界の中で、マッチ箱程度の大きさの戦車に動きを与え、前進時にはBB弾を発射する機構と相俟って、いかに小さな戦車玩具で幅広い遊びを演出するかと言う、これもまたトイ戦車に特化した究極の設計だと言えるでしょう。(閑話休題)
 さて右の画像を見ると、前後方向のスペースはギアボックスと単三電池でいっぱいいっぱいで、電池を左側にオフセットしてまとめ、空いたスペースに逆転スイッチを押し込んでいます。機械要素の全てを限られた車内に納める、これもまた日本独特の極小化設計のなせる技と言えるでしょう。
 先に述べたようにこのシングル気機構は、既にリモコン「スペース1号」発売時点で設計され、シングル版が無かった「…1号」「…2号」でもリモコン、シングルコンバーチブルな選択ができる商品となっていました。
 しかも…。

ゼンマイ「スペース1号」のインストと車内レイアウト。

 そして次は同じシャーシをゼンマイ走行として作る場合のレイアウトです。
 この場合大き目のゼンマイユニットとはいえ、モーターも電池も不要な為、すっきりとした余裕のあるレイアウトになっていますね。
 このLS独自のゼンマイは、同社の他のキット、97式中戦車などにも使われた売れっ子で、独特のつや消し防錆処理の施されたもので、中々パワーがありました。
 しかし同社ゼンマイの最大の弱点は、パワーのカナメのゼンマイの焼き入れ処理(?)が甘い為か、10年、20年という経年劣化で、今では巻き戻しパワーが弱くなっているものが少なくありません。
 まぁ、これは当時の子供達には全く関係ないことで、40年以上も未来の現在のオヤジコレクターの事など夢にも考えもしなしなかった、想定外の要求とも言えますが。(笑)
 逆にここまで来て初めて分ってもらえるのが、一つの車体設計で2モーターリモコン、1モーターシングル、ゼンマイ走行と、3ウェイのパワーソースをこなすシンプルな構造の驚きです。車体内部の複雑な「出っ張り」「引っ込み」は、この全ての選択に応えられるマルチパーパスな万能設計の到達点であったわけです。
 LSは1/32の小柄なカーモデルでも、ゼンマイとモーターライズのコンバーチブルキットを出していて、それも同一シャーシで両方をこなすクレバーな設計をしています。
 当然それは最初の設計コンセプト上で考慮すべき能力で、効率的な部品融通性を念頭に置いた、非常に考えられた設計思想の具現でした。
 更にパワーソースの流用性というだけでなく、次ではいよいよLSのSFメカの真骨頂の、車体デザインに迫ります。

「スペース1号」の車体上部の基本パーツ群。
 ではここでもう一度「スペース1号」の車体構成に戻ってみてみましょう。
 ドライバーとレーダーオペレーター(?)を前後にタンデム配置した独特のSFビークルの基本設計に、燃料タンク、ミサイル発射機構、連装機銃砲塔、レーダー等を配した、子供にも分り易い設計になっています。
 車体中央部の穴は、ゼンマイ版の時にゼンマイの巻き上げ軸に直結させてレーダーを自動回転させる為の引きこみ穴です。
 ゼンマイの四角い巻き上げ軸は、巻き戻りの時に十分なトルクでゆっくり回る特性から、ミドリの「エコーセブン」のレーダー回転や、同じく同社の「ジュニアモグラス」のカッター回転等によく流用された部分です。
 これもシンプルな機構で如何に多くのギミックを確実に実現させるかと言うJOSFプラモ特有の工夫で、こんなプラモデルは世界のどこにも生まれた事は無く、またプルバック以外のゼンマイが廃れた今では、新製品としてはもう二度とお目にかかれない機構です。
 戦後四半世紀の日本という、限られた時代の限られた地域でのみ発生し、極めて短期間に幕を閉じた、ポピュラーで短命な、数奇なギミックと言えるかもしれません。

「スペース2号」の車体上部の基本パーツ群。

 そして次は「スペース2号」の車体構成です。
 1号の無骨なボディとは打って変わって、薄く流麗な上部パーツに、これもまたシャープな翼とキャノピー。それに1号とは別設計になるミサイル発射機構です。
 当時のSFメカにはミサイルを発射するギミックが少なくありませんが、大きく分けてミサイル自体にバネを仕込む太いミサイルと、ミサイル自体は単品パーツで、ランチャー部分にバネを仕込んでミサイルを飛ばす二つの方式がありました。
 前者はミサイルが大型化して迫力が増す一方、後者はミサイル部分が軽くなって勢い良く遠くまで飛ぶと言う違いがありました。
 ミドリのキットのミサイルは全て前者で、ミサイル自体がメカのデザイン要素に大きく貢献し、LSの車載ミサイルは後者で、デザイン要素としてのミサイルはコンバーチブルな選択武装と言う新たなバリューを獲得しています。

 それにしてもボディパーツの緩くカーブした流麗なラインと言い、シャープにデザインされた翼部分のラインと言い、今から40年以上前の子供向けプラモデルとは思えない、非常に洗練された形だとは思いませんか?

「スキッパー」の車体上部の基本パーツ群。
 車体パーツ紹介の最後は「スキッパー」の部品です。
 パッケージ紹介のところでも触れましたが、「スキッパー」のボディーは「スペース1号」のものと同じパーツで、そこに大型有翼ミサイルとランチャーを載せたものとなっています。
 ここで気が付くのは、車体ミサイルのパーツと、有翼ミサイルの翼部分が「スペース2号」のものと同じものだという事です。
 ランナーからもげたミサイルのノーズコーン部分は、写真撮影時に間違った場所においていますが(笑)、これは「スペース2号」の車体先端パーツですね。
 「スペース1号」では車体の側面から生えていた車体ミサイルは、「スキッパー」では燃料タンクを取り払った平面スペースに垂直にセットするように変更されています。
 また、これは「スペース1号」でも同様ですが、操縦席に付く風防ガラスはLSの超ロングランスピードボート「ジュニアセブン」と同じもので、試しにこのパーツを「ジュニアセブン」の操縦席(操舵席?)に付けると、ピッタリとはまります。
 こういったようにLSは、車体の走行機構だけでなく、SF要素として重要な「サイン」である武装や車体の基本パーツまで大胆に流用したメーカーでもあるのです。

「スペース2号」と「ビッグコマンダー」の揃い踏み。

 では最後の「ビッグコマンダー」のパーツ構成は?
 その疑問には同じくパーツの比較写真で…と思いましたが、生憎「ビッグコマンダー」は組み立て前に写真を撮るのももどかしく、10年ほど前にパパッ!と作ってしまったので、ここでは同じボディーパーツを使った兄弟同士の「スペース2号」と並んだ、完成品ツーショットで比べて頂きましょう。
 確かに車体下部は同じ。ボディの基本パーツも同じですが、鋭角でスパルタンな「スペース2号」に比べ、全く別人の無骨で重厚な「ビッグコマンダー」の出で立ちがわかります。
 本当は尾翼の前にレーダーが付いていたのですが、搬送用に取り外し式にしたのが仇になって、外れて落ちて壊れてしまいました。(ioi)しくしく。
 また「ビッグコマンダー」は「スペース2号」のボディに「スペース1号」の武装・外装パーツを組み合わせたもので、1号の燃料タンクは車体側面を防護する位置に、逆に車体側面についていたジェットエンジンは水平尾翼の先端にそれぞれ移り、またレーダー基部はあのドリルと見紛うばかりの回転衝角になっていました。何と大胆で自由奔放な組み合わせでしょうか!
 因みにパッケージ解説の時から、イラストの迫力ある構図を参考に車体最前部を回転衝角と呼んでいますが、インストにはただ「レーダーおおい」とだけ書かれており、キットでは単純に接着するだけになっています。でもここはやっぱり回したいよね!という事で…。実はこの作例では、元々シングル走行だけのキットを、こんな風に改造しています。(UMAとは別サイトなので、このページにはブラウザの「戻る」ボタンで帰ってきてね)

「スペース2号」のフロントビュー。
 ちょっと脇道にそれましたが、あらためて「スペース2号」のキット紹介に戻りましょう。今度は正面からのショットです。
 黄色いボディー本体部分は、シャーシに被せた時の相互の辻褄を合わせるために、前後に小さな下部部品が付きますが、基本的には一枚構造で、そこにシンプルな構成部品がビルトオンされます。
 主翼は意外に大きな上反角が付いていますが、前後の位置を決める小さな出っ張りはあるものの、ボスとボス穴のような接合構造ではなく基本的にはベタ付けです。同じボディパーツを使った「ビッグコマンダー」の写真では”BIG COMMANDER”の車名デカールの「C」の文字の上の辺りに小さな切り欠きがあるのが分るでしょうか?ここに翼の付け根の僅かな出っ張りを引っ掛けると車体に対する翼の取り付け前後位置が決まります。
 また、主翼の付け根部分の断面は平面ではなく、車体のカーブに沿うように軽く凹んでおり、この隙間が無くなる角度で接着すると、翼の取り付け角が決まるという訳です。今ではメチルエチルケトンを使った超速乾性の流しこみ接着剤や各種瞬間接着剤等があって、こういうベタ着け、イモ着けも大変楽になりましたが、当時キット同梱のチューブ入り接着剤だけでこの位置決めをするのはチビッコには少々要求スキルが高かったかもしれません。(笑)
 とはいえ、翼そのものは非常に薄いシャープなものです。しかも下面が平らな一方、上面は翼のほぼ前から1/3あたりに厚みのピークがあって、そこから更に「野菜なら切れそう」なほど薄い後端に絞り込む流麗な断面形をしています。もしこのパーツを流体の中に置いたら、ベルヌーイの定理で確実に揚力が発生する事は間違いありません。
 「スペース2号」は実際に飛行する模型ではないのでこのような事を書いても「だから何?」な検証ですが(^_^)、こんな所にも飛行機のエルエスの矜持にも似た拘りがあるように感じられます。
 余談ですが、「スペース2号」のキャノピーの上には、0系新幹線の運転席…正しくは乗務員室…の屋根に付く「静電アンテナ」のようなパーツが付きますが、何故かこれはボックスイラストには描き込んでありません。小川画伯、描き忘れちゃったのかなぁ。

今でも鮮烈なインプレッションで迫る「スペース2号」のトップビュー。

 さてその次に控ぇしは「スペース2号」のトップビュー。
 設定だけを聞くと荒唐無稽に過ぎる「宇宙パトロール飛行戦車」という名前ですが、このカッコ良さを見たら激しく首を縦に振って納得。
 「ドリル付ければ地中戦車!」にも負けない、「これだったらSF飛行戦車でよし!」な素晴らしい説得力
 この角度で見ると、主翼後端と同じ角度で設計された水平尾翼前端のデザインコンセプトも光ります。
 車体前部上面にあるラムエア取入れ口(?)のバルジには丸い穴が開いていますが、これは半年後に発売された「ビッグコマンダー」では機関砲塔取り付け穴になる部分です。つまりLSは最初からこの車体をパーツ互換のコンバーチブルキットとして設計していた事が分ります。
 LSのSFキット群は、パーツの流用が多い事で何となく「メーカーのおっちゃんが既存部品をテキトーに組み合わせて新製品にしてたんじゃないの?」位に思っている方も多いかと思いますが、このパーツ設計を見ると、極めて計画的に商品展開がされていた事を裏付けます。

「スペース2号」のバックビュー。
 「スペース2号」やや後方からのショット。
 この角度からだとミサイルのランチャーチューブの発射機構がよく分ります。
 流石に車体に取り付けるとランチャーの前後関係は明白ですが、この独特なデザインのランチャーをユニットだけ手に持ってミサイルをセットしようとすると、何度も後ろの吹き出し口からミサイルを差し込もうとしてしまいます。(笑)
 緩くカーブを描く平面的なボディーのベースに、将にジェット機の本体を合体させたような難しい組み合わせですが、ボディー左右と胴体と垂直尾翼が交わる尾部の構成が絶妙で、全てのラインが破綻無く連続している様は芸術的ですらあります。
 デカールが貼っていないのはこれから塗装をする予定だからですが、無塗装の状態でも翼はパーツが映り込むほどテッカテカ。これって今から40年以上前のキットなんだよ。
 こういったメーカーオリジナルSFの真面目なキットに接する時、ボク等は当時何という素晴らしい時代の素晴らしい国に生を受けた事か!と、得難い幸運に感謝するのです。
 
 最後にオマケ画像です。

 シリーズ最後の「ビッグコマンダー」が発売されてから3年後の1971年5月、LSの宇宙戦車は全てリニューアルされて新たに発売されました。
 それは「ウルトラパンサー」「スカイレーダー」「サンダーバトル」「スーパータイガー」の4種類で、それぞれ「スペース1号」「スペース2号」「スキッパー」「ビッグコマンダー」をベースに、キャタピラ走行機構の変わりに、ゼンマイで巨大なコンバットタイヤを直接回して走るように改修されたものでした。ゼンマイは同社お得意のカーモデル用の高速ゼンマイではなく、先にゼンマイ版「スペース1号」のところで紹介させて頂いた戦車用ゼンマイをそのまま使っているので、完成させると戦車と同じような重厚な走りを見せる事と思われます。
 車体はキャタピラ版と同じものですが、車体下部には4本の転輪車軸がモールドされているので、ここには箱の中のイラストタグで「前後輪ドライブ用タービン」と解説されているカバーが付いて、ロードホイールの車軸が巧みに隠されました。
 と、アゲアゲの解説をしてみましたが、正直「えー?こんなになっちゃったのお。」な感が否めないのは何故でしょう。それはやはりSFメカの王者とも言えるSF戦車として産み落とされた名品が、LS御得意の改修戦略によって、しかし今回は悪い方向…戦車ではなく安直に装甲車にしてしまった事でメカの魅力が低下した事に尽きるでしょう。更に重厚だったパッケージイラストも、心なしかチープになった感じすらします。
 実はこれは何もLSに限った事ではありません。今まで何度か1967年、68年、69年をJOSFの奇跡の3年間(人によっては2年間と勘定する場合もあります)と書いてきましたが、奇跡とまで呼ばれる突出した隆盛期が過ぎると、そのブームは一気に下火になり、その後は事実上のエピローグの時代になってしまうのです。
 そんな中で各メーカーも投資を抑えつつ新製品をリリースし続ける必要があり、苦渋の決断の下でこういった商品を企画する事になったものと思われます。
 それでも貴重なLS最後のSFファイティング・アーマード・ビークルとして、この4つのキットは永遠に記憶される事でしょう。
 さて、今まで紹介させて頂いた「スペース2号」を、皆様は如何御覧になりましたか。JOSF戦車が最も輝いていた時代の隠れたスーパーメカに思いを馳せ、皆さんも想像力溢れた力強い「俺飛行戦車」を作ってみようではありませんか。
 

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